気づくことが支援

アスペルガー症候群の友人とは一緒に外出したり、飲みに行ったりしていました。ある日、その友人は会社の上司とコミュニケーションがうまくいかず、上司を殴ってしまったんです。

結局、友人はその会社を辞めてしまいました。そこからは、生きる心地や気力が減っていき、家に引きこもりがちになってしまったんです。

「仕事が無くなっただけで、人ってこんなに変わってしまうんだ」と思ったと同時に「障害のある人への生活支援だけではダメなんだ!就労支援も必要なんだ!」と感じました。そして、一番の決め手はその友人からの相談だったんです。

「先日、お父さんの誕生日だったんだけど、今までは自分が働いたお金でお父さんの大好きな鰻をおごっていたんだ。でも、今年はそれができない…。世古口さんと遊ぶのもお母さんからお金をもらって遊んでいるんだ。自分は何てダメなやつなんだ!世古口さん、僕は仕事がしたい!僕でも働けるような環境を作ってほしい!」と強く言われました。

この言葉がきっかけで障害のある人への就労支援をしたい気持ちが強くなりました。
2019年4月、京都府京田辺市で『就労継続支援B型事業所 三休-THANK YOU!!』(以下:三休)をオープンしました。代表の西田と意気投合し、京田辺で一緒にやろうという話になったんです。

京田辺市内では就労支援を受けたい障害者が約600人いるのに対し、就労支援事業所は6事業所しかないのが現状でして…。この街で就労支援をすることで、この街に住んでいる障害者のニーズを満たせるのではないか、そう思い、京田辺で就労B型事業所をスタートしました。

オープン当初から3ヶ月、利用者(以下:メンバー)は1名でした。そして、運営する僕たちは農業も就労支援も未経験の状態で、かつ、就労支援の営業もしないといけない状況だったんです。

不安もありました。「これでやっていけるのかな」って。クワとスコップのみで2畝を3時間かけて作業したのは苦い思い出です。時には地元の農家さんにサポートしていただくこともありました。未経験で何も知らないからこそ、失敗もして、正直しんどかったです。

そんな背景があったからこそ、メンバーにはこう伝えたいです。
「失敗してもいいんだよ」って。

しんどかったことや失敗したことを共有しているからこそ、“自分ごと”になります。そして、仕事の達成感をメンバーと一緒に分かち合えることって働くやりがいや関係性にも繋がってくるんです。

福祉事業所ってどうしても支援“する”人と“される”人の構図になってしまいます。でも、それは建前で、僕らとしては一緒に働くメンバーでいいのではないかなと。

そして、支援されることに慣れるのではなく、「これせなあかん!こうせなあかん!」とメンバーに気づいてもらうことこそが支援とも思っているんです。そこを意識して日々一緒に働いています。

家族の幅を拡張すること

他の福祉事業所と三休の差別化は“地域づくり”です。この場所を就労する場としてだけでは捉えていません。就労支援だけでなくこの場が地域の拠点になることによって、メンバーが暮らしやすくなったり、街の人から「○○さん」と呼んでもらえるような関係性ができたりすることで、困った時に声をかけ合える人が増えることが福祉だと捉えています。

僕が地元で経験してきたような原体験を呼び起こすようなイメージでしょうか。地縁型の関係性を作っていきたいんです。そのためには僕たちがデザインしていかないといけません。例えば、三休のイベントやカフェを通じてスタッフやメンバー以外のまちの人と仲良くなる。

そして、市民からこの場で何かしたい人が出てきたり、彼らが主催するイベントに出店しないかと声をかけてくれる人が出てきたり、三休に関わりたい人が増えていきます。

そのような関係性を作っていくことこそが“地域づくり”だと思っています。そして、そのような場に障害を持っている人も一緒にいる。そういったことの積み重ねなんです。

「お前はいらない」
母は僕にそう言い、急にいなくなりました。20歳の時です。悔しさ・悲しさ・怒りと色々な感情が込み上げてきました。そのことがきっかけで「家族って何なんだろうか?」と考えるようになったんです。これは人生をかけての問いでもあります。

過去の出来事を振り返ったり、家族それぞれの思いを想像したりすると、みんな何かしらの生きづらさを抱えていて、誰しもが母のような行為をする可能性があると感じました。

だからこそ、依存先を増やすこと、つまり、コミュニティを増やしていかないといけないと考えるようになりました。三休での活動を通じ、関係する人が増えていくことによって誰かの居場所が増えていく、生きやすさが広がっていくのではないかと信じ、日々実践しています。三休を立ち上げる前からの動きも、母のことが根本として強い部分があるんです。

コミュニティの由来はラテン語で「お互い与え合う」ことを意味しています。そう考えると僕らはまだまだです。Win-winの関係性ではありません。色々な人に助けてもらってばかりで、僕らから「与える」ことができていないんです。今はまだ種を蒔いてきたところ。

僕らから「与える」ようになっていくためには、組織が小さいとできることに限度があります。そういった意味では、僕たちのやっていることも含めて広げていきたい。

そうなることによって、今まで救えなかった人が救えたりするかもしれない。それが、僕らにとっても誰かにとって「与える」だったり、コミュニティを増やしていくことに繋がっていくと信じているんです。

僕は三休をオープンさせる前から強く思っていることがあります。
それは、銭湯のような場所を作ることです。

小さい頃、地元の銭湯に通っていました。そこでは、様々な年代、知らない人たちが一緒に同じお風呂に浸かりながら他愛ない話をしていたり、悩みを打ち明けたりしていたんです。僕はそこで生きる哲学を知ったのかもしれません。

三休でも同様に、障害がある人やそうじゃない人、外国人や色々な世代の人たちが同じ空間で一緒に過ごしてほしい。みんな裸になれば考えが違うだけの“同じ人”なんです。ただ、色々な人がいるってことは、同じだけ様々なドラマが繰り広げられていきます。

嬉しいこともあれば、悲しいこともあるかもしれない。でも、誰かの人生の一部を一緒に過ごすってそういうことなんです。そのために僕らはあくまでも脇役に徹さなければいけない。その中でメンバーに対して

「“してあげる”ではなく、“する”をどう演出していくか」

この点もデザインしていく必要があるんです。素直に褒めることがあれば、厳しく怒ることもあります。計画通りにいくことなんてほとんどありません。思い描いていたことより下回るようなことだってあります。

一緒に働き、考え、気づくことで僕らもだしメンバーの意識も変わってくる。そうやって“自分ごと”として働く瞬間を一つ一つデザインいくことが、自分の思い描く銭湯のような場所が一つでも増えていくのではないか、そう信じています。

(終わり)

前編中編はこちら)

話し手:世古口敦嗣(就労継続支援B型事業所 三休-THANK YOU!!!- 施設長
聞き手:上泰寿(てまえ〜temae〜編集長)
インタビュー日:令和3年1月14日
インタビュー場所:就労継続支援B型事業所 三休-THANK YOU!!!-

●編集後記
僕も世古口さんと同じように人口が少ない小さな地域で育ってきました。苗字ではなく、下の名前で「○○ちゃん」「○○さん」って年齢関係なく呼び合っていたのを今でも覚えています。

良い意味でお節介な人も多くて、何かあったらお互い助け合うってことが日常だったなとインタビュー冒頭で思い出しました。それは普段のコミュニケーションがとれていて、相手のことが“自分ごと”に感じられるような関係性が自然とできていたからかもしれない。世古口さんのお話を聞いてそう感じました。

ただ、障害をお持ちの方とは日常生活でお会いする機会はありませんでした。それはたまたま自分が住んでいた地域にいらっしゃらなかっただけかもしれません。学校はどうしても健常者と分けられてしまうし、社会人になって働いていても、同じようになってしまう。

僕が初めて、そういった方を日常で触れ合うようになったのは前職で福祉の現場に従事した時でした。ご自宅に伺ったり、仕事ができるように就労支援をしたり、様々な形で関わらせてもらいました。最初は、どう接したらいいかわからなくて困惑したのを覚えています。

それでも、回を重ねるごとに相手のこともわかってきたし、接することが当たり前になってきたので、最初ほど困惑しなくなってきました。接していく中で、相手がどんな家庭環境で、どんな症状で、どんな背景があるのか、そこを意識して接していたかと思います。

その繰り返しの中で、障害をお持ちの方と接するのが“自分ごと”になってきたし、今取材して回っている中で障害福祉の分野を取り上げたいと思うようになったんです。

世古口さんのインタビューの最後で
「“してあげる”ではなく、“する”をどう演出していくか」
という言葉がありました。

それは中々簡単なことではありません。でも、“する”を演出していく中で、“気づく”ようになり、“自分ごと”として物事を捉えられるようになっていく人が一人でも増えていけば、障害があるかないか関係なく、色々な特性を持った集まる銭湯のような場が生まれていくのではないか。そんな予感が高まった今回の取材でした。

世古口さん、『就労継続支援B型事業所 三休-THANK YOU!!!-』のメンバーの皆さん、本当にありがとうございました。

上泰寿(かみさま)

上泰寿(かみさま)

フリーランス。鹿児島県出身。10年間市役所に勤務し、現在は編集者見習いとして、「聞くこと」「書くこと」「一緒に風景をみること」を軸に基礎的な力の向上を図っている。